YubiKeyによるウクライナの重要なITインフラの保護

ロシアによるウクライナへの侵攻は、物理的な世界とデジタル世界の両方においての戦闘です。 双方にとって、情報戦は戦場において人類史上最も重要な役割を果たしていて、最大の攻撃ベクトルと脅威は脆弱なログイン認証情報です。大手政府系エネルギー企業のウクライナのサイバーセキュリティ担当者によると、未遂も含むインフラへの攻撃は2021年全体では2万1000件でしたが、2022年2月24日から3月24日の間だけで76万件以上と、3519%も増加しました。

3月4日、Yubicoは認証パートナーであるHideezから、ウクライナの重要インフラの保護への協力を依頼されました。 戦争が勃発した時、Hideezチームの多くはウクライナに留まり、最大の標的となるウクライナの企業やITシステムのために自分たちの専門知識や製品、サービスを提供する決断をしました。Yubicoは2万個のYubiKeyの寄贈と、技術支援の提供を決定しました。 その後数週間のうちに、YubiKeyは下記をはじめとする12の政府機関と重要なインフラを提供する企業に配布されました。

  • SSSCIP(ウクライナの国家特別通信情報保護局)
  • ITの近代化と次世代政府電子サービスを主導するデジタル転換省
  • 政府系エネルギー企業と発電所
  • ウクライナの「.ua」ドメイン管理企業であるHostmaster.UA

私は複数の組織の代表者とビデオ通話を行い、彼らが直面しているITセキュリティの課題や、サイバーセキュリティに関する共同の取り組みを公開することが重要である理由について、詳しく教えていただきました。 以下は、私たちが交わした会話の要約です。ロシアによる侵攻後、貴社がウクライナの認証会社からサイバーセキュリティを支援する企業に転身した経緯について、詳しく教えてください。

「2月24日、私たちは空から降ってくる爆弾の音で目を覚ましました。 突然、私たちの世界は崩壊し、家族、友人、同僚、パートナーは皆、これから自分がとるべき行動を見極めようとしていました。 翌週、ほとんどの人は地下壕や地下駐車場、地下鉄の駅で寝泊まりするという過酷な現実を体験しました。 人々は凍えるような寒さの中、爆弾や銃弾の音を聞きながら、冷たい床で寝ましたが、その状況は今も続いています。 私たちの美しい祖国は、今も攻撃を受けています。
都市に爆弾を落とすだけでなく、ロシアのハッカー集団は重要インフラ、政府組織、企業に対して前例のないサイバー戦争を始め、暖房、電気、水道、地方議会、軍事司令部、物流業者などを機能不全に陥れようとしました。
すぐに私たちは、ウクライナのできるだけ多くの政府機関や組織と協力し、増加する攻撃から迅速に安全を確保するために、弊社のあらゆるリソースを活用することを決断しました。

Oleg Naumenko、Hideez CE

何がサイバーセキュリティ上の最大の脅威と課題でしたか?

「攻撃の大半は、重要なインフラの多くのアカウントにアクセスできる個人とシステムを標的にしていました。 ウクライナの多くの政府機関では、国家に対する高度な攻撃を防御できる強力な多要素認証を使用していません。
Yubicoとは過去に一緒に仕事をした経験があり、Hideezは既にスマートカード、FIDO認証、YubiKeyのサポートをHideez認証サーバーに統合していました。 そこで、私たちはこのミッションを支援するために、協力をお願いすることに決めたのです。 私たちはYubiKey 5シリーズの2万台のデバイスと、展開を支援するための技術サポートを提供していただいたことに感謝しています。
YubiKeyを受け取った後、政府系エネルギー企業を含む複数の政府機関や重要インフラ機関に配布しました。 また、YubiKeyを更に広範なハイセキュリティや軍事用途に使用するため、ウクライナ国家特別通信情報保護局(SSSCIP)と協力して、YubiKey 5シリーズの認証取得に取り組みました。」

Yuriy Ackermann、Hideez軍事活動VP

どうして新しいサイバーセキュリティツールを導入しようと考えたのですか?

「私たちは、政府、重要インフラプロバイダーに対する前例のない攻撃を目の当たりにし、サイバースペースにおけるロシアの侵略から国を守るために24時間365日体制で働いています。 通常なら6カ月以上かかる認証プロセスをわずか数週間で完了し、ウクライナのすべての政府機関、軍、およびその職員がYubiKey 5シリーズを使用できるように認証を取得したのです。
また、SSSCIPのスタッフが電子文書管理システムで使用するため、3,000個のYubiKeyを配備しているところです。 Hideez社やYubico社とのパートナーシップにより、フィッシング対策やパスワードレス認証のソリューションをできるだけ多くの政府機関に導入しています。 これには計り知れないほどの労力がかかり、YubicoとHideezチームからのサポートがあって初めて可能となります」

Oleksandr Potii、SSSCIP副長官

YubiKeyの導入と展開が始まってから、どんな効果がありましたか?

「戦争が始まってから、我々は大量のフィッシング攻撃を受けています。 このリスクを軽減するために我々の組織は毎日パスワードを変更することを要求していましたが、これでは十分なセキュリティが確保できず、時間がかかるだけでなく、戦闘地域で働く従業員に更にストレスを与えていました。 安全性が高いだけでなく、様々なシステムやデバイスでシームレスに動作するソリューションが必要でした。 また、インターネットや携帯電話の接続が不安定な場所でも使えるツールも必要でした。 さらに、フィッシングや中間者攻撃などの手口が巧妙化しているため、レガシー認証やモバイルベースの認証には頼れない状況でした。
YubiKeyの利点は、汎用マルチプロトコルのデバイスとして構築されているため、PCログイン、VPNアクセス、クラウドベースの生産性の向上、メールシステム、ERPシステム、モバイルアプリケーションに同じ認証器を使用できることです。 展開の拡大に伴い、YubiKeyのユースケースも増えていくでしょう。
YubiKeyによりセキュリティが大幅に強化され、多くのITシステムに迅速かつ簡単にアクセスできるようになりました。これは従業員に大きな安心感を与えてくれます。 YubiKeyは、地上戦の最前線で活躍する兵士を守る防弾チョッキと同じくらい、サイバー防衛において重要なものだと考えています」

匿名希望、ウクライナ発電所サイバーセキュリティ担当役員

「Hostmaster.UAは、HideezとYubicoからのサポートに心から感謝しています。 既に大半の社員にYubiKeyを配布していて、既存の全インフラをHideezサーバーとYubiKeyで保護する作業を進めているところです。 DNSSECレコードを保存するために、Yubico HSMの統合を進めています。 今回の提携は画期的なことで、今後数週間のうちに技術的な詳細をお伝えできると思います」

Oleg Levchenko、Hostmaster CEO

ウクライナ政府では、ITインフラの近代化とサイバーセキュリティの強化に向け、他にどのような取組みを進めているのでしょうか?

「公式な侵攻の前日2022年2月23日、ウクライナの組織に対して「HermeticWiper」というマルウェアが使用され、Windows端末が標的となり、マスターブートレコードが操作され、その後起動障害が発生しました。 ロシア政府が支援するAPT攻撃グループも、サードパーティー製インフラやソフトウェアの侵害やカスタムマルウェアの開発と展開により、高度な諜報技術やサイバー能力を発揮しています。 最近の情勢と軍事侵攻を踏まえ、EU技術支援プロジェクトのレガシー専門家グループは、ウクライナの重要インフラ、通信、政府システムを支援するための国際的なサイバーレジリエンス専門家チームを結成することを決定しました。 私たちは、経験豊富なサイバーセキュリティチーム、IT専門家、コンピュータ専門家、データアナリストを集めました。
プロジェクト受益者であるデジタル転換省は2019年8月に設立され、2024年までに市民や企業向けのすべての公共サービスの100%をオンライン化すること、交通インフラ、集落、福祉施設の95%に高速インターネットアクセスを提供すること、600万人のウクライナ人にデジタルスキルを習得させること、国のGDPに占めるITシェアを10%まで増やすことで、市民にとって自動化された使いやすい公共サービスの実現を目標としています。 機密データをインターネットに移行することには大きなメリットがありますが、同時にセキュリティ上の課題も発生します。
プロジェクトコンポーネント1の一環として、私たちはデータ保護のためのリスク軽減と幅広いセキュリティツールの導入に取り組んでいますが、強力な多要素認証の活用は特に重要な構成要素になるでしょう。 現在、デジタルエコシステムとプロジェクト関係者は、YubiKeyとHideezをネイティブにサポートする主要なクラウドサービス上での業務が増えていて、フィッシング攻撃から自分たちのチームを守るためのキーを配備しているところです。
これらの推奨ソリューションを導入する目的は、脅威の発見から緩和措置までにかかる時間を短縮し、脅威への対応能力を高めることで、公共インフラや重要インフラの耐障害性を向上させることです」

Julia Troyan、デジタル転換省ウクライナプロジェクト技術作業部会プロジェクトマネージャ

全ての人がインターネットを安全に利用するためのYubicoのミッションの詳細

Hideezとの取り組みの他に、Yubicoはポーランドに本社を置き、ウクライナ支援のための軍事戦術用キーの配布を支援しているパートナーであるePrinusにもデバイスを提供しました。 また、地域の安全に必要な情報を共有するために精力的に活動している何百もの地元記者や他の人道支援団体を支援するために、Secure it Forwardプログラムを通じてYubiKeyを寄贈しています。
Yubicoは世界中に従業員がおり、今回の戦争で被災された方々に思いを寄せています。 私たちは、従業員、お客様、パートナー、記者、人道支援団体などのデジタルセーフティを確保するというミッションに対して、今後も揺るぎない姿勢で臨み続けます。 私たちは、先ほどご紹介したような話をパートナーから聞いた時、自分たちの努力が実を結んでいることを実感しています。

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